C.用語の解説
AAV,Adaptive Assisted Ventilation[換気モード](邦語:順応性補助呼吸)
 流量が周期的に変化する定常流機構とVolume assisted ventilatorを組み合わせた、SIMVの変法である。定常流が少ない領域では小さな吸気努力でもトリガーできるが、定常流が大きい領域では強い吸気努力がなければトリガーできない。定常流の変化の程度によって補助呼吸が入る程度を調整できる。定常流方式のため、吸気仕事量はディマンドバルブ方式の機械より少ない。患者の吸気要求の強さに応じて、強制換気の頻度が増加する。EMMVでは、患者の吸気努力が少なければ強制換気が増加し、多ければ強制換気が減少するが、AAVでは、ちょうど逆の思想で強制換気が与えられる。市販機ではアイカ社のWeanyに搭載されたが、現在では市販製品はない。
 
Accumulator tank,Accumulator[構造用語](邦語:貯蔵タンク)
 別名Reservoir tank,Reservoirとも呼ぶ。ただし、Reservoir bagとは別の物である。中央配管よりのエアーや酸素は、駆動源としてみるとそのままでは、配管自体の内部抵抗や人工呼吸器自体の内部抵抗のため、瞬間的に100LPMを超えるPSVやPCVのピークフローに対応できない。ブレンダーを経由したガスをタンクに蓄える事でピーク流量に対応する。
 ところが、フローコントロールバルブを酸素、エアーに専用に並列装備している機械では、内部抵抗が少ないので、Accumulator tank,Accumulatorを使わなくてもピークフローにある程度は対応できる。
 
Actuator,[制御用語](邦語:アクチュエーター)
 空気弁"Pneumatic valve"を制御する入力側に入る制御ガスを意味することが多い。本来、信号はエアーでも電気でも構わないが、エアーの場合にこう呼んでいる。"actuate"とは命令遂行するの意味。
 
AMV,Augumented Mandatory Ventilation[換気モード](邦語:なし)
 Bear-5に装備されているモード:EMMVに近いが、むしろSIMV+EMMVと表現するのが適切。呼気分時換気量が達成されていても、最低限度として受けるべき SIMV の換気数を医療行為者が設定できる。
 
analog[制御用語](邦語:アナログ)
 信号を表現するのに連続的な物理量を使用する方式。デジタルの対になる用語。デジタル方式に比べて信号量あたりの情報量が多いが、信号が劣化しやすい、雑音に弱い、複雑な処理がしにくい、欠点もある。
 
Apnea Back Up ventilation[換気モード](邦語:無呼吸バックアップ換気)
 CPAP、SIMVで患者が無呼吸になった際に、自動的に強制換気 (Time trigger,Volume ventilation)を入れる機能。通常はVolume Ventilationであるが、Pressure Controlでおこなう機種もある。なお、Bennett 7200に装備されているBUV,Back Up Ventilatorは別物。
 
Apnea Monitoring[呼吸モード](邦語:無呼吸モニター)
 Ohomeda社のCPU-1での表現。無呼吸バックアップ機能のこと。
 
APRV,Airway Pressure Reliese Ventilation[換気モード](邦語:気道圧開放換気)
 間欠的にCPAP圧を解放して、自発呼吸モードでの換気量を補助する圧換気による補助呼吸モード。
 
ASB,Assisted Spontaneous Breathing[換気モード](邦語:圧支持換気に相当)
 Drager社の機械に装備されている自発呼吸を補助するモード。一般のPSVとほとんど同じであるが、トリガー方式や吸気圧の制御に独自の工夫がある。
 
ASV,Adaptive Support Ventilation[換気モード]
 Hamilton社のGalileoに搭載されているモードで、Otis の式に基づいて、呼吸仕事量が最少になるように換気回数と一回換気量をSIMV方式で適応するモード。換気回数はSIMV回数で、一回換気量はVS,PRVC類似の換気で調整する。
 
ASSIST,Assist Ventilation[換気モード](邦語:補助量換気)
 Bear社が好んで使う表現。患者の吸気努力によって開始される量(ボリューム)換気を意味する。Volume Assisted Ventilationも同じ意味。もし吸気トリガーが検出されなければ、自動的にCONTROLが適応される。A/Cの方が正確な表現かもしれない。
 
Assisted CMV[換気モード](邦語:補助量換気に相当)
 ヨーロッパ系の機械に使用されることの多い量換気モード。機械的強制換気(Controlled Mechanical Ventilation)が自発呼吸(に同期して)をこれを補助するという概念である。synchronizedを意味するs-CMVを使用することもある。
 
ASSIST window[制御用語](邦語:なし)
 Bird社のSIMVの解説にでてくる用語。SIMV のトリガーウィンドーのこと。
 
Auto Cycling[制御用語](邦語:オートサイクリング)
 トリガー感度を敏感に設定しすぎると実際のトリガーがないのに、機械が自分でトリガーしてしまう状態。PEEP/CPAPでも回路内のリークによる圧の低下でAuto Cyclingする事もある。特にリーク補償機能Leak compensatorのない機械に起こりやすい。
 
Automode[換気モード](邦語:オートモード)
 Siemens Servo-300Aに追加された新しい機能で、AutomodeをONにすると、一定時間の無呼吸を検出すると調節呼吸モードになる。自発呼吸を数回検出すると元のサポートモードに復帰する。
 
AutoFlow[換気モード](邦語:オートフロー)
 Drager社Evita4に搭載されている新しい呼吸モードで、PCV圧を設定換気量になるように自動調節する機能である。Siemens Servo-300のPRVCと類似であるが、PRVCがsCMVの圧換気モードに相当するのに対して、AutoFlowはSIMVやsCMVの強制換気に置き換わる自動調節型の圧換気モードである。しかもこれはBIPAP機構で実現されるので、たとえ強制換気中であっても患者は呼気が可能である。
 
Autoresume Apnea Back-up[換気モード](邦語:自動復帰型無呼吸バックアップ)
 Bennett 7200に搭載されている。Apnea Back-up は、患者が無呼吸になれば自動的に働きだすが、これを止めるのに何かの操作を要求する機械と患者の呼吸が再開すれば自動的にバックアップ機能が停止する機械の2種類がある。後者は自動復帰型と呼ばれる。なお、この違いは、無呼吸があったことをオペレーターに確認させる必要があると考えるか、確認が不要と考えるかの設計哲学の差で決定されている。
 
A/C[換気モード](邦語:補助量換気に相当)
 IMVに対する用語として、すべての自発呼吸に対応した強制換気によって換気補助をするモードの総称。主にアメリカ市場や日本市場で発売される機器で表示される。CMVの用語より用語の混乱もなく論理的なので最近は好んで用いられる。Assist or Control ventilationの略。補助もしくは強制換気を意味する。量換気の場合はA/C(volume)と表現し、PCVなどの圧換気ではA/C(pressure)と表現する。Pressure or Time trigger,Time cycleである。
 
Back up function[制御用語](邦語:なし)
 Engstrom社のEMMVの解説にでてくる機能。もしFlow rateの設定を誤って著しく低く設定した場合に、強制換気での換気量が確保できなくなる。その場合はEMMVも正常に機能できなくなるので、強制換気条件を強制的に10 BPM,I:E=1:1に強制設定する機能。
 
Baseline pressure[制御用語](邦語:ベースライン圧)
 機械が作動する際の基準線の圧。CPAP、PEEPの設定圧と同じになる。
 
Bellows[構造用語](邦語:ベローズ)
 蛇腹の構造をしたゴム製のバッグ。従量式の強制換気を得るための構造に利用される。
 
Bennett valve[構造用語](邦語:なし)
 過去のBennett社の人工呼吸器では、患者の吸気努力で吸気弁が開く構造の弁を採用していた。これをBennett valveと称した。このバルブは吸気ガスが続く限り開き続ける特性がある。
 
Bias flow[制御用語](邦語:バイアス流)
 機械の作動を滑らかにするために流しておく潤滑油的な働きをするガス流。吸気バルブでは、レスポンスの向上、精度の改善、等を目的にして5〜10LPM流していることが多い。このガス流は同時に患者回路の洗浄流Rinse flowにもなっている。しかしSIMVやCPAPに使う定常流とは概念、目的、流量が違う。
 
BiPAP[換気モード](邦語:バイパップ)
 Respironics社の用語で、睡眠時無呼吸の治療機械ならびにその機能に対する登録商標。実態はマスクによる(Nasal)、PSV+PEEPとPCV+PEEP、CPAPである。Drager社のBIPAPとは異なる。最近は低侵襲の人工呼吸法として応用がされ、高く評価されている。
 
BIPAP[換気モード](邦語:バイパップ)
Drager社の用語でEvitaシリーズに搭載されている換気モード。二つのCPAPレベルを自発呼吸に同期させながら、定時的に切り替えるCPAPの変法である。設定によってはAPRV,Airway Pressure Release Ventilationにもなる。初期の頃は、BIPAPはCPAPの変法の範疇であったが、最近ではBIPAPシステムによる圧換気モードの総称に発展した。
 
Blender[構造用語](邦語:酸素ミキサー)
 エアーと酸素を混合して希望の酸素濃度に調整する装置。別名Mixer,ミキサー
 
Breath period[制御用語](邦語:呼吸期間)
 吸気時間、呼気時間を合せた時間。CMVサイクル時間を意味する場合もある。
 
BUV,Back Up Ventilator[制御用語](邦語:なし)
 Bennett 7200に搭載されているバックアップ機能。マイクロプロセッサーの故障時に機械が完全に停止してしまわないように、これとは独立した論理回路で構成された制御ボードによって、故障時に作動を維持する機能。この時には一回換気量、呼吸数が固定されたCONTROLモードに機能が限定される。
 
Calibration[制御用語](邦語:キャリブレーション、校正、較正)
 測定系の精度を維持するために基準となる値で測定系を校正すること。
 
Chamber[構造用語](邦語:チャンバー)
 閉鎖された空間を作りだす容器をこう呼ぶ。Engstrom社の人工呼吸器は代々、麻酔器のバッグを揉む麻酔医といった構図をそのまま機械化した構成になっている。バッグを揉む構成はChamberを利用して作られている。詳細はElviraの解説を参照。
 
Chamber air supply valve[構造用語](邦語:なし)
 Engstrom社のErica,Elviraでは吸気フローはChamberを間接的に駆動することで吸気ガスを発生しているが、この駆動用のエアーバルブをこう呼んでいる。
 
Check valve[構造用語](邦語:逆止弁、一方向弁)
 一定の方向にガスを流し、逆向きの流れは遮断する弁。一方向弁のこと。別名one way valve。
 
CMV,Contineous Mandatory Ventilation[換気モード](邦語:連続的強制換気)
 間歇的強制換気IMV,Intermittent Mandatory Ventilationと対極の言葉。すべての補助換気を強制換気によって行う換気モード。ASSISI/CONTROL,VCV,PCV,sCMV,assistedCMVなどがこれに該当する。過去では、同じCMVの略語のControlled Mechanical Ventiolationと類似の概念で、両者を混同しても支障がなかったが、現在では多様な強制換気モードが存在するので、両者を厳密に区別する必要がある。しかし両者を混同した記載を多く見かける。
 
CMV,Controlled Mechanical Ventilation[換気モード](邦語:機械的調節換気)
 医療行為者が規定した、吸気時間、一回換気量、呼気時間、呼吸回数で換気をおこなう呼吸モード。別名、強制量換気。
 
Compensator[構造用語](邦語:代償装置)
 代償する機能を有する装置。機能により各種のCompensatorがある。
(1)PEEP compensator(邦語:なし)
 呼気弁は弁抵抗のために、呼気の流量に応じて圧勾配を生じる。呼気弁には呼気の流量の影響を受けにくいバルーン弁が用いられることが多いが、それでも呼気ガス流量の影響は皆無ではない。この影響を最少にして、設定PEEP/CPAP圧を維持する機構をPEEP compensatorと呼ぶ。これには通常回路内圧によるサーボ制御が用いられているが、呼気ガス流量により呼気弁駆動圧を補正する方式もある。
(2)Leak compensator(邦語:リーク補正機構)
患者回路にリークがある場合、PEEP/CPAP圧が維持できなかったり、また、リークによる圧低下でAuto-cycleを生じる弊害がある。これを防ぐためにリークを補償する機構をLeak compensatorと呼ぶ。
 
CONTROL,Control ventilation[換気モード](邦語:調節呼吸)
 別名、強制換気。Bear社が好んで使う表現。患者の吸気努力に一切反応しないで、一定のサイクルで行なわれる強制量換気。Time triggerのVolume Ventilationを意味する。
 
CPAP[換気モード](邦語:シーパップ)
 吸気時・呼気時ともに、気道に一定の圧を加える換気モード。吸気は圧によって補助されるが、呼気は圧の抵抗に打ち勝って駆出しなければならない。したがって患者にとって、CPAPは日常あまり使わない呼気用の呼吸筋を主体にする換気法になる。一方PEEPは単に呼気相での抵抗を意味し、吸気相では吸気補助が受けられる。つまり患者サイドから見れば対応上はCPAPとPEEPには大きな隔たりがある。CPAPとPEEPは別の概念であるが人工呼吸器より見れば、CPAPは自発呼吸 + PEEPである。残念なことにPEEPとCPAPを区別して設計した機械はほとんど存在しない。まして、CPAPはPEEP+0レベルのPSVであることがほとんどである。
 例外的常識として、人工呼吸器のモード設定スイッチに表記されているCPAPは自発呼吸モードを意味する。このポジションは、CPAP、PSVの両方のモードを意味する(用語の混乱を生じやすい使い方で望ましくないと思うが、業界内ではこれが常識である)。
 
CPU[構造用語](邦語:中央演算装置)
マイクロプロセッサーの中で中心的な役割をする装置。厳密にはMPUとCPUは異なるが、ほとんど同じものと理解して差し支えない。
 
CRT,Casode Ray Tube[構造用語](邦語:ブラウン管)
 電子銃より照射された電子線が発光体にあたり発光する原理を用いて作製されたディスプレー装置。
 
DC operation[制御用語](邦語:直流作動)
 バッテリー等の直流電源で機器を作動させることをこう呼ぶ。一般的に機械は、交流の商用電源AC100vで作動するが、実際は機械内部で各種の直流電圧に変換されて利用されている。理論的にはどんな機械でもDC operationは可能であるが、バッテリーを複数個使用したり、消費電力が多ければ実用的とは言えない。各部分の電源電圧が一種類に統一されていて、しかも消費電力が少なくなければDC operationは実用的にならない。
 
Demand flow[制御用語](邦語:ディマンドフロー)
 患者の自発呼吸の要求に応じて提供される吸気ガスをこう呼ぶ。供給方式には、(1)ディマンドバルブDemand valveという部品を使用する方式、(2)吸気バルブであるサーボバルブシステムが対応する方式、(3)定常流でまかなう方式、等がある。
 
Demand valve[構造用語](邦語:ディマンドバルブ)
 圧の低下をきっかけとして、圧の低下が続く限りバルブが開いてガスを供給する機械的部品。これはPneumatic valveの一種である。ところが、最近の人工呼吸器では吸気ガス制御系によってディマンド流も供給していることが多い。広義にはディマンドガスを供給するバルブという意味でこれもディマンドバルブと言えなくもないが、厳密には両者は区別されるべきである。また、両者には厳然とした性能差がある。
 
電源バックアップ[制御用語](英語:Battery Backup)
 商用電源の供給が途絶えても機械が働き続けれる機能。一般的に15〜30分程度の短時間のバックアップしかできない。
 
Digital[制御用語](邦語:デジタル)
 信号をon,offの状態の組合せで表現する方式。雑音に強い、信号の劣化がない、論理処理回路を簡単に構成できる利点がある。
 
Direct drive[制御用語](邦語:ダイレクトドライブ、直接駆動)
 駆動力発生部が直接的に外部を駆動する機構をいう。間にギアやベルト等の動力伝達系がないために、動力伝達系が持つ反応時間の遅れや歪がない利点もあるが、技術的な難しさもある。最近では人工呼吸器の呼気弁駆動系に利用されつつある。
 
Display[構造用語](邦語:ディスプレー)
 文字やグラフを表示する装置。以下の種類がある。CRT、LCD、LED、プラズマディスプレー
 
Double Cycling[制御用語](邦語:ダブルサイクリング)
 強制換気が終わっても患者の吸気が継続した場合や、強制換気の直後にチューブなどの振動を拾って、もう一度強制換気が送られてしまうこと。合計2回分の換気が患者に送られるので気道内圧が異常に上昇する。また、患者にとっても不快な現象である。
 
Driver[構造用語](邦語:ドライバー)
 ネジを回す道具だけでなく、他の物を駆動するものを意味する。人工呼吸器ではFlow Control Valve Driver,Stepper Motor Driver、Servo valve driver,PEEP valve driver等が使われている。
 
EIP,End Inspiratory Plateau[制御用語](邦語:吸気終末プラトー)
 Plateauの項を参照。
 
Ejector[構造用語](邦語:エジェクター)
 空気をジェット流にして駆出する部品。(1)Venturi効果によってガスを増量する働きや、(2)周囲のガスを吸引する働き、また、(3)Pressure Generatorとして作動する特性を持つ。
 
Electric circuit[構造用語](邦語:電気回路)
 電流を媒体に構成された回路。なお、空気を媒体に使った回路を空気回路"Pneumatic circuit"と呼ぶ。
 
Electrodynamic motor[構造用語](邦語:電磁モーター)
 電磁石の力を応用して動く装置。必ずしも回転運動に限定されない。
 
Electromagnetic motor[構造用語](邦語:電磁モーター)
 Electrodynamic motorと同じ意味。
 
Electronic circuit[構造用語](邦語:電子回路)
 半導体や真空管など、電子の働きを応用した素子で構成された回路。
 
EMMV,Extended Mandatory Minute Ventilation[換気モード](邦語:拡張強制分時換気)
 詳しくはMMVの解説を参照。原法のMMVでは、設定した分時換気量を超える(患者の)自由換気を許容していなかった。EMMV はこれを可能にしているので、Extended が付けられている。ただし、MMVしかできない機械は市販されたことはなく、MMV機はすべてEMMV機であるのでExtendedをわざわざつけて区別する必然性はない。
 
Exhalation valve,Exhaled valve[構造用語](邦語:呼気弁)。通常は PEEP弁も兼ねている。以下の方式がある。
(1)Baloon valve,Mashroom baloon valve(邦語:バルーン弁)
 一般の人工呼吸器によく用いられている方式。エアーで間接的に駆動する。弁自体に逆流防止機能もある。簡単にPEEPをつくれる利点がある。
(2)Rubber tube(邦語:なし)
 Servo ventilatorに使われている呼気弁。はさみでこのチューブを閉めることで呼気弁として機能する。逆流防止弁を併用する必要がある。
(3)Direct drive(邦語:直接駆動)
 電磁力(Electro-Dynamic Power)の作用で直接駆動する構造、もしくはその構造。
 
Feed Back Control[制御用語](邦語:フィードバック制御)
 出力の一部を修飾したうえで、これを入力に戻すことで、出力の誤差を最小にするテクニック。特に出力信号と基準信号との誤差を比較して、その差を誤差修正信号として入力に戻す制御をサーボ制御Feed Back Servo Controlと呼ぶ。
 
Feed Forward Control[制御用語](邦語:フィードフォワード制御)
 機械の制御法に関する技術用語。あらかじめ入力段階で修正用の信号を加えて、出力される信号の誤差を最小にするテクニック。Feed Back Controlと併用されることが多い。他の工業機械には古くから応用されているが、人工呼吸器ではNew-Port社のE-200の吸気バルブの制御に初めて応用されて注目を浴びている。
 
f IMV[制御用語](邦語:なし)
 Drager社の機械ではSIMV回数をこのように表現している。
 
f IPPV[制御用語](邦語:なし)
 Drager社の機械では、sCMV回数のことをこのように表現している。
 
Flow Augumentation[呼吸モード](邦語:なし)
 Bear-1000に搭載されている機能。Flow Supplementationの発展型。詳細は各論Bear-1000の解説を参照。
 
Flow by[換気モード](邦語:フローバイ)
 Bennett 7200に搭載されている機能。主にCPAPに有効。簡単に表現すれば回路内定常流を供給する機構である。通常の定常流では、呼気相の全期間に定常流が流れているので、(特に呼気弁の性能が良くなければ)呼気抵抗により呼気弁での圧格差を生じる。Flow byでは、呼気相初期に、(患者の呼気ガスの減少を機械が感知するまで)呼気抵抗にならないように定常流の流量を下げる機能が付加されている。最近ではフロートリガー機構に発展していて、可変ベースフロー+フロートリガーを意味する。
 
Flow control valve[構造用語](邦語:吸気ガスコントロール弁)
 高圧のガスを開閉することで吸気ガスを発生させる弁。以下のものがある。
(1)Servo valve
 ガスの流量を電気信号で自在に調整できる電磁弁、比例制御弁とも言う。
(2)Solenoid valve
 電磁弁。電気信号で空気の流れを断続する機能を持つ弁。
 
Flow Cycle[換気モード](邦語:なし)
主にPCVなどの圧換気において、吸気の終わりに吸気ガス流量が低下した際に不必要な吸気時間を短縮して吸気を終了させる機能。Flow Terminationとも言う。
 
Flow supplementation[制御用語](邦語:なし)
 Bear-5に搭載されている機能。ASSIST/CONTROLで設定吸気流量より患者の吸気努力が大きくても、これに追従するように吸気バルブを調整する機能。これはBear-1000のFlow Augumentationに発展する。
 
Flow Termination[換気モード](邦語:なし)
 Flow Cycleと同じ。
 
Flow transducer,Pneumotachometer[構造用語](邦語:フロートランスデューサー、フローセンサーと同義語)
 空気の流量を電気信号に変換する装置。以下の方式がある。
(1)Differential Pressure flow transducer(邦語:差圧式センサー)
 流体の途中に抵抗物を設けてその前後での圧較差を測定すると、圧較差とガス流量との既知の関係から流量を推定することが可能になる。Variable orfice,wire mesh、等が抵抗体として用いられる。
(2)Hot wire flow transducer(邦語:熱線式センサー)
 流体中に電気を流して高温になった白金合金線(Hot wire)をガス流の中に置くと、ガス流量に応じて熱線が冷却される。白金合金線は温度に応じて電気抵抗値を変えるので、白金合金線の電気抵抗を測定することで空気の流量を測定できる。
 
(3)Silverman flow transducer(邦語:なし)
 Wire meshを抵抗物に用いたDifferential Pressure Flow transducerの一種。Infrasonic Adultstarの流量測定に用いられている。
(4)Strain gauge flow transducer(邦語:歪検出型センサー)
 ガスの流れに応じて、流体中に設置されたFlagが偏位する。この偏位は物理的な歪を検出する装置(圧電素子)を用いて電気抵抗の変化に変換される。このようにして流量を電気信号に変換してとりだすことが可能になる。
(5)Variable orfice(邦語:可変口径型差圧式センサー)
 Mylar等の合成樹脂の薄い膜に馬蹄形の切れ込みを入れておく。空気の流量に応じて開口面積が変化するので、非直線的な変化ではあるが、流量に応じて膜の前後での抵抗が変化する。したがってその前後の圧を測定し、これに電気的な直線化処理を加えれば、広範囲の流量に対して正確に流量を測定することが可能になる。バード社やハミルトン社のセンサーに用いられている。
(6)Venturi tube(邦語:なし)
 流体の途中に狭窄部を設けてその前部と狭窄部との圧較差を測定する。流量に応じて狭窄部での圧が低下するので、圧較差を測定することで流量を測定する。
(7)Vortex flow transducer(邦語:なし)
 流体中にstrut(障害物)を置くと、strutの後部で空気の乱流が発生する。これをカルマン渦と呼ぶ。渦の発生数は流量に応じて増加するので、カルマン渦の数を計測することで流量を測定する。カルマン渦の数の計測は、カルマン渦に超音波をあてて超音波が変調されるのを計測する方法や、strutの振動を光センサーで感知する方法、等がある。
(8)Pressure-Valve Positioner Flow measurement(邦語:なし)
吸気バルブ(servo valve)の開閉状態は絶えずpositioner(位置センサー)で把握されている。Servo valveの前後の圧とServo valveの位置(開き具合)に応じて流れるガス流量は一定であるので、既存のデーターがあればガス流量を決定できる。この測定法では余分な部品を使わずに流量を高速に測定できる。また、余分な内部抵抗の増加を避けれるので、より多くのピーク流量を稼げることを意味する。
(9)Time Transit方式
 Servo iの呼気測での計測に用いられている。
ガスの流路に沿って2カ所に超音波の送受信器が設置されていて、2つの超音波の伝播時間差によってガスの流速を計測する方式。精度と安定性に優れる。
 
分時換気量[医学用語](英語:minute volume)
 一分間に患者が換気するガス量。吸気側で測定する場合と呼気側で測定する場合がある。機能的残気量があるために両者は必ずしも一致しないが、長い目でトータルにみれば同じ量になるはず。患者回路でのリークの可能性を考慮すると分時換気量のアラームは呼気側で計測するのが望ましい。
 
Fuel cell[工学用語](邦語:燃料電池)
 人工呼吸器では酸素濃度の測定部品として用いられている。酸素との反応で電気が発生する電池を用いて酸素濃度を測定できる。経時変化があるのでキャリブレーションが必要。
 
不応期[制御用語](英語:irresponsible period,lock out time, waiting time)
 一般的には信号に反応しない期間をこう呼ぶ。人工呼吸器では、強制換気後に、不用意に気道内圧の変化を感知してトリガーすると、呼気を終了する間もなく、さらに一回量の換気が強制的に押込まれるために (Double-cycling)、有害な気道内圧の上昇が生じる。これを防ぐために、強制換気直後にトリガーに反応しない不応期を設けてある機種がある。
 
Galbanic cell[構造用語](邦語:ガルバニック電池)
 燃料電池の一種。酸素濃度の測定に用いられる。
 
GEM,Gas Exchange Metabolics[構造用語](邦語:呼気メタボリズム)
 Engstrom社のElviraに搭載されている機能。間接代謝測定機能。ただし、専用の呼気ガス二酸化炭素濃度測定機Et CO2 Analizerを付け加えないと正確な測定ができない。
 
Generator[構造用語](邦語:発生装置)
 人工呼吸器では吸気ガス発生装置の意味で使われることが多い。
(1)Flow generator(邦語:フロー発生装置)
 流量を指標とするガス発生装置。
(2)Pressure generator(邦語:圧発生装置)
 圧を指標とするガス発生装置。
 
半導体[工学用語](英語:semi-conductor)
 シリコンやゲルマニウムに不純物を混ぜると導体と不導体との中間の特性を示す物質ができる。これを半導体と呼ぶが、半導体の特性を応用してトランジスターやダイオードといった素子を作ることができる。半導体素子によって、小電流で大電流を制御するもの、一方向にしか電気を流さないもの、加える電圧によって内部抵抗の変るもの、等、の各種機能部品が作られる。現在の電気技術は半導体素子抜きでは語れない。
 
比例制御弁[構造用語](英語:Servo valve)
  サーボバルブの解説を参照。
 
HME,Heat & Moist Exchanger[構造用語](邦語:人工鼻)
 患者自身の呼気中に含まれている、温度と湿気を利用して吸気ガスを加温加湿する部品。別名人工鼻。なかにはバクテリアフィルターも兼ねている製品もある。加温加湿性能は、製品による差が大きい。passive humidifierとも言う。
 
補助呼吸[換気モード](英語:Assist ventilation)
 Assist ventilationの項を参照。
 
IC,LSI,SLSI[工学用語](邦語:集積回路)
 一つのチップの上に多数のトランジスターやダイオードを使用して構成された部品。集積度に応じて名称が変わる。部品一つで従来の回路に相当する機能を持つので小型化や消費電力の低減、高速化に貢献している。
 
IMV,Intemittent Mandatory Ventilation[換気モード](邦語:間歇的強制換気)
 自発呼吸を自由にさせておいて、間歇的に強制換気を付加する換気モード。オリジナルは自発呼吸に同期しない。狭義には、トリガーを得るのが難しい新生児、小児用の人工呼吸器用のモードの表現として用いられる。このモードでは通常、回路内定常流が自発呼吸用のガスとして用意されている。広義にはConteneous Mandatory Ventilationの対になる用語として用いられ、SIMVと同義語である。
 
Inspiration Assistence[換気モード](邦語:なし)
 Engstrom社の機械に搭載されている。ほとんどPSVと類似の換気方式であるが、Engstrom社独自の吸気ガス発生機構により独特の特性をもつ。
 
Interface[工学用語](邦語:インターフェース)
 特にデジタル信号についていえるが、信号には各種規格があり、それらの規格の異なる信号を他の器機に転送するには変換装置が必要である。この変換装置をInterfaceと呼ぶ。最近はInterfaceの意味がさらに拡大してMan-Machine Interfaceのような使い方もする。
 
Intermittent PEEP[換気モード](邦語:間歇的PEEP)
 Drager社の機械に搭載されている。通常のSIGHでは一回換気量を増加させて行なうが、Intermittent PEEPでは、さらなるPEEP付加によりSIGH効果を得ている。この方が気道内圧の異常上昇が少ない。
 
IPPB,Intermittent Positive Pressure Breathing[医学用語](邦語:なし)
一般的には、IPPV機を使用しておこなう呼吸理学療法をこう呼ぶ。主に無気肺に対する治療法である。自発呼吸下にマウスピースをくわえて、IPPV機による肺の陽圧拡張とネブライザー療法をおこなう。
 
IPPV,Intemittent Positive Pressure Vent
ilation[換気モード](邦語:間歇的陽圧換気)
 間欠的陽圧呼吸のことで、陽陰圧式人工呼吸呼吸や体外式陰圧人工呼吸と区別するための用語。吸気は陽圧でおこなうが、呼気は呼吸器の弾性により受動的におこなう換気方法。この用語ができた当時は、IPPVとCMV(Contineous Mandatory Ventilation)は類似の概念であった。例外的使用法として、Drager社は歴史的解釈を堅持していて、IPPVをCMVの意味で使用している。これはsCMVと表現すべきであろう。もちろんDrager社のIPPVはPEEPを併用できるので、とても矛盾がある用法である。
 
IRV,Inverse Ratio Ventilation[換気モード](邦語:逆比換気)
 吸気時間と呼気時間の比率は通常1:2〜1:4程度であるが、この比率を逆転させた換気法。平均気道内圧を下げた状態でそれ以上のPEEP効果を得られる。Siemens社では、特にPCVと組合せをSIRV,Servo Inverse Ration Ventilationと命名している。
 
Insufflation[制御用語](邦語:吸気)
 機械換気での吸気相を意味する。ヨーロッパ製に多い表現。
 
IPPVサイクル時間[制御用語](英語:IPPV cycle time)
 強制換気における吸気時間、吸気ポーズ時間、呼気時間を加えた時間。
 
Jet venturi[構造用語](邦語:ジェットヴェンチュリ)
 ジェット流をエジェクターより流すとventuri効果を現し、周囲の空気を巻き込んで吸引する作用がある。このことをJet venturi効果と呼ぶ。人工呼吸器ではJet venturi効果を応用した部品が多数使われており、ネブライザーや陰圧発生装置、酸素希釈装置、等に利用されている。
 
加温加湿器[構造用語](英語:active humidifier)
 医療用のガスは機械への悪影響を防ぐために、除湿されたガスが使用される。ところが、吸気ガスは100%,37℃に加温加湿されて肺に送られることが望ましい。人体では上部気道、特に鼻がこの役割をはたしている。人工呼吸器による換気では人体の加温加湿機能がバイパスされて利用できないので、加温加湿装置を付加する必要性がある。加温加湿器には吸気抵抗が少ない、加湿高率が良い、雑菌の増殖が少ない、維持費が安い、構造が簡単、等の特性が求められているが、完全な製品はなく、それぞれ一長一短である。現在下記の製品が市販されている。
(1)Aquapor[商品名]
 Drager社の機械に搭載されている。パスオーバー型の製品である。
(2)Fisher & Pykel[商品名]
 我が国では、現在一番多くの機械に搭載されている(もしくは搭載可能に設定されている)モデルで、業界標準機の地位を占めている。しかし、高流量ガス下での加温加湿性能やランニングコスト、抗菌性、温度の立ち上がりの遅さ、に弱点がある。単に、扱いやすさが支持されている理由であろう。温度のサーボ機能により数種類のバリエーションがある。チャンバーはディスポで、また、各モデルでも共通になっている。
(3)Bennett Cascade[商品名]
 以前は加温加湿器といえば、ほとんどこのタイプであった。最近は首位の座をFisher & Pykelに奪われている。
 
(4)VH820[商品名]
 Bear社の最新の加温加湿器で、煮沸による水蒸気で加温加湿をしている。原理上、他の製品に比べて、加湿効率は高いが、回路内凝集が多い。チャンバーは再使用型とディスポのものがある。最近、IMI社は輸入を撤退した。
(5)HPD[商品名]
 Bird社の機械に搭載されていた。Fisher & Pykelと同様の加湿原理が採用されている。やはりチャンバーはディスポである。しかし、最近のBird社の機器でも、Fisher & Pykelが標準設定されてる。
(6)Concha therm[商品名]
 黄色いボディーが印象的な製品で、アメリカでは相当のシェアーを有する。しかし我が国では標準装備、もしくは選択可能としている人工呼吸器はない。専用の精製水パックが必要である。やはりチャンバーはディスポである。
 
片ガス[制御用語](英語:gas supply failureに相当?)
 最近の人工呼吸器は酸素配管と圧縮ガス配管を要求するのが、標準的であるが、片方のガスの供給が途絶えて、残りのガスだけが供給されている状態を片ガスという。片ガスの状態では酸素濃度の設定は意味をなさないが、他の機能は影響されない機械が多い。
 
呼気弁[構造用語](英語:Exhalation valve)
 exhalation valveの項を参照。
 
呼気認識条件[制御用語](英語:termination criteria)
 PSVでは患者の吸気が終了するとPSVの吸気相も終了するが、これを機械が認識する条件を、一般的には、呼気認識条件と呼ぶ。しかし正確には吸気終了認識条件と呼ぶべきであろう。パラメーターとして通常は流量が用いられるが、最近では、これに加えて、気道内圧の上昇、換気量に制限を設けたもの、吸気時間に制限を設けたもの、吸気を立上げ期と圧維持期に分けて別の条件で認識するもの、等いろんな方式が考案されている。制御条件によってPSVの性質や特性に差がある。
 
吸気終了認識条件[制御用語](英語:termination criteria)
 呼気認識条件のこと。
 
吸気サイクル[制御用語](英語:cycle to inspiration)
 吸気相から呼気相に移行する作動基準点を称して〜cycle と呼ぶ。以下の四方式がある。
 (1)圧サイクルPressure cycle
 (2)量サイクルVolume cycle
 (3)時間サイクルTime cycle
 (4)流量サイクルFlow cycle
 
強制換気[換気モード](英語:Control ventilation)
 通常は、機械的に強制される量換気(Volume ventilation)を意味する。sCMV/CMV,assisted CMV/CMVと類似である。患者の状態、意志にかかわらず吸気時間、一回換気量が強制される。
 
LCD,Liquid Crystal Display[構造用語](邦語:液晶表示)
 液晶による表示装置。液晶自体は光らないのでバックライトが設けてあることが多い。
 
Leak compensation,Leak make-up[制御用語](邦語:回路リーク補正機構)
 VIP Bird,Bear-5,Evitaに搭載されている。患者回路でのリークにより基準圧Baseline pressureが低下するのを補償する機能。ただし、圧トリガー方式では、誤動作を防ぐために、トリガー感度の設定値により補正できる最大リーク量が制限される。一般的には感度を鈍くした方が補正能力が高い。フロートリガー方式ではこうした制約はない。この機能はPEEP/CPAP圧の維持に貢献するだけでなく、機械のAuto Cycleの防止機能も合せもつ。
 
Learning logic & Prediction control[制御用語](邦語:学習型予測制御)
 New-Port E-200 に人工呼吸器としては初めて採用された吸気ガス流量制御技術。Feed Foward Controlの一種。詳しくはE-200の解説を参照。
 
LED[構造用語](邦語:発光ダイオード)
 光を発生する半導体素子で、発光能率が高い。また耐久性に優れている。光っている数値表示装置はほとんどこのタイプである。
 
Lock out time[制御用語](邦語:不応期)
 New-Port 社での表現。従量式換気の直後に、不必要にトリガーに反応しないように設けられた不応期のこと。
 
Logic circuit[構造用語](邦語:論理回路)
 半導体素子の組合せで、ハードウェアーにより論理判断をする回路。AND,OR,NOTの基本的な3回路の組合せでだけで論理回路は構成される。理論的にはどんな論理判断でも可能であるが、あまりに高度な論理判断をする回路は、設計が複雑になるので難しい。また組み立て技術上も配線が複雑になりすぎるので、最近ではもっぱらマイクロプロセッサーを利用したソフトウェアーによる回路に交代している。参考までに記載すればAND回路では 1,1 が入力されると 1 が出力され、1,0 や 0,1 そして 0,0 が入力されると AND の条件に合致しないので 0 が出力される。
 
Mail box[制御用語](邦語:メールボックス)
 本来の意味は郵便箱であるが、コンピューター用語では、情報のやりとりを一時的に置いておくところ。MPUを多数搭載するマルチMPUでは一ヵ所の故障が全体に波及してしまう可能性がある。これを防ぐためにMail boxを使ってアイソレーション(電気的な分離)をしている。
 
Mandatory ventilation[換気モード](邦語:強制換気)
 調節呼吸と同じ意味。患者の意思や状態、換気能力に関係なく、一定の換気を強制的に与える換気モード。mandatoryとは命令的なの意味。
 
Manifold[制御用語](邦語:マニフォールド)
 配管の集合体を意味する。人工呼吸器では、本体内部で吸気フローを通す配管の中の最終部分を意味していることが多い。ここには、安全弁、開放弁等のエアー配管が集合している。また、古いタイプの人工呼吸器では、呼気弁がサポートアームのところに外付けになっていて、この部分にネブライザーが併設されている。この部分をマニフォールドと呼ぶこともある。
 
Mechanical servo[制御用語](邦語:メカニカルサーボ)
 Ohmeda社のCPU-1での機能。患者回路内圧が高いケースでは、設定ガス流量より低い流量が供給される可能性がある。これを防ぐため低圧レギュレーターの調整圧を気道内圧に応じて変化させて、これを補償する機能。この調整機構には電子部品は一切関与せず、機械的な部品(Pneumatic valve)だけで構成されている。
 
Metabolic computer[構造用語](邦語:代謝モニター)
 代謝量を呼気ガス分析から計測する装置。自発呼吸下でもキャノピーを使用して測定できる汎用機や人工呼吸中だけ測定できる専用機がある。
 
Microprocessor,MPU[構造用語](邦語:マイクロプロセッサー)
 コンピューターの心臓部で、プログラム上の処理を行なう演算素子。MPU,CPUとほとんど同じ意味に使われる。
 
Mouse[構造用語](邦語:マウス)
 本来はねずみのことであるが、コンピューター用語では、手にもって動かして画面を操作する装置。形がねずみに似ているのでMouseと呼ぶ。Infrasonic社のAdultstarの操作系がMouseの操作方法と同じなのでこう呼ばれている。
 
MMV,Mandatory Minite Ventilation[換気モード](邦語:強制分時換気)
 EMMVの解説を参照。患者の自発呼吸による分時換気量が一定以下になれば強制量換気が与えられる換気方法。自発換気量が充分あれば、強制量換気は一切行われない。患者の自発呼吸が完全になくなれば調節呼吸と同じになる。なお原法では強制量換気は自発呼吸に同期しないが、市販機では、Engstrom社以外は自発呼吸に同期する。また、原法では設定分時換気量以上には換気ができないが、市販機はすべて設定値以上に換気できるEMMVである。
 
MMV,Minimum Minute Ventilation[換気モード](邦語:最少分時換気)
 Hamilton社のVeolaに装備されているモード。制御の目的や思想はMandatory Minute Ventilationと類似である。その上、略語がMandatory Minute Ventilationと同じなので、これらは混同されて誤解されることが多い。Minimum Minute Ventilationでは、吸気の分時換気量が一定化するようにPSVレベルを自動的に調節してくれるモード。分時換気量の低下や自発呼吸の停止で、バックアップ機構(Step by Step Procedure)が働き、自動的にSIMV,sCMV/CMV に切り替わる。SiemensのVolume Supportと類似の換気モードである。
 
Niedle valve[構造用語](邦語:ニードル弁)
 流量調節弁。テーパー状の針が開口部にあたっているが、針のあたり具合によって開口部の面積が変化して、流量が調節されるしくみの部品。スピコン(Speed Controller)とも言う。
 
Non return valve[構造用語](邦語:逆流防止弁、一方向弁)
 One way valveと同じ。
 
Normal Rate[制御用語](邦語:呼吸回数)
 Bear社の表現。Bear 社の機械ではASSIST/CONTROLでの設定呼吸数もSIMV回数の設定も、またAMVでの最低強制換気数の設定もすべてNormal Rateの設定で行なう。そのためこれらの総称としてNormal Rateという表現が用いられている。
 
One way valve[構造用語](邦語:一方向弁)
 一方向にしかガスを流さない弁。機能的にはNon return valveと同じである。
 
Oxygen sensor[構造用語](邦語:酸素センサー)
 酸素濃度測定用のセンサー。
 
PAV,Proportional Assisst Ventilation[換気モード](邦語:なし)
呼吸筋が呼吸をするのに必要な仕事量を一定の割合で補助する換気モード。自動車のハンドルを軽くしてくれるパワステに似たような働きをする。実際はフローゲインとボリュームゲインを補助することでアシストしている。
 
PCV,Pressure Control Ventilation[換気モード](邦語:圧調節換気)
 PCVは一定時間、一定の圧を加えて行う補助呼吸モードである。吸気の始りはPatient or Time triggerである。Pressure controlで吸気が提供される。吸気の終了はTime cycleである。PSVの対として、Servo-900cに搭載されたのがオリジナルである。当初はPSVほど普及しなかった。しかし、最近では強制換気をPCVでおこなう換気法の利点が評価されて、多くの人工呼吸器に搭載されている。Time cycle,Pressure Reliefと同じ吸気圧波形であるが、吸気ガスの発生・制御の形態が違う。Servo-300,Servo-900,New-Port E-200,Bennett 7200ae,Bear-1000,Adult-Starで使用可能。Drager EvitaのBIPAPやPressure Limitation Ventilationでも設定のしかたで類似の作動になる。A/C(pressure)とも表現される。
 
PEEP,Positeive End Expiratory Pressure[換気モード](邦語:ピープ)
 呼気に圧による抵抗を付加して、肺胞の虚脱防止、換気の不均等性の改善、肺胞での拡散障害の改善、肺の酸素化能の改善、を目的とする。PEEPを付加しないときをZEEPと呼ぶ事もある。
 
Photo-sensor[構造用語](邦語:光センサー)
 光を感知するセンサー。通常は物体の動きを光で感知することで、位置センサーやフローセンサーとして用いられている。
 
PIM phase,Patient Initiated Mandatory ventilation phase[制御用語](邦語:SIMVトリガーウィンドーと同義)
 Bennett 7200での表現。SIMVでのトリガーウィンドーを意味する。
 
Plateau,Inspiratory plateau,EIP[制御用語](邦語:吸気プラトー)
 吸気相の終了時に吸気弁も呼気弁も閉ざして、気道内圧が高いまま維持する期間。これは酸素化には有効であるが、平均気道内圧が高くなる。また患者には不快である。この時相の圧で患者の肺の静的コンプライアンスを計算する。
 
PLV,Pressure limitation ventilation,Pressure Limited Ventilation[制御用語](邦語:圧制限換気)
 Drager社のEvitaに搭載されている換気機能。量換気では有害な気道内圧の異常上昇が起こりえるが、これを防ぐために一定の設定圧に達すると吸気流量を調整してPCV類似の換気にする機能。この際、吸気時間を延長し、プラトー時間を短縮し、一回換気量や I:E 比が変動しないように制御する。しかし、同社のBabylog 8000では圧リリーフ式の換気を意味する用語としても使われている。
 
Pneumatic circuit[構造用語](邦語:空気回路)
 空気の動きで(空気を媒体にして)、いろんな作動をするように構成された機能回路。
 
PPS[換気モード](邦語:なし)
Proportional Pressure Supportの略で、実態はPAVである。Drager 社独特の表現。
 
Pressure Augumentation[換気モード](邦語:なし)
 簡単に表現すれば、PSV(PCV)とCMVを融合させた換気モードである。volume cycleのPCVとも言える。Bear社のPressure AugumentationとBird社のVAPSはオリジナルを同一とするが、制御法の詳細が異なる。
 
Pressure limit ventialtion[換気モード](邦語:従圧式換気)
 Pressure cycled ventilationを意味するが、表現が適切でないので、最近ではあまり使われない。まれにPressure controlled(or generator)方式の人工呼吸モードとして使われていることもある。
 
Pressure relief valve[構造用語](邦語:圧リリーフ弁、圧逃がし弁)
 過剰な圧を大気中に逃す構造をした弁。
 
Pressure transducer[構造用語](邦語:圧トランスデューサー)
 圧を電気信号に変換する装置。
 
Program[制御用語](邦語:プログラム)
 コンピューター用語では、マイクロプロセッサーが遂行していく命令を書いてある命令情報。
 
Proximal airway pressure[制御用語](邦語:近位気道圧)
 患者の気道内圧は人工呼吸器にとって最重要の制御パラメーターである。これをできるだけ患者の口元で測定するためは、Yピースのところで測定する気道内圧が望みえる(患者にとっての)最大限の近位部位になる。この部位での気道内圧を近位気道圧"Proximal Airway Pressure"と呼んでいる。患者回路のコンプライアンスの影響を受けにくい、患者回路抵抗を補正する機能を持たせれる、等の利点もあるが、患者回路が複雑になる欠点もある。近位気道圧を測定するために設けてあるチューブを近位気道圧チューブ"Proximal airway pressure tube"とか"Remote sensing tube"と呼ぶ。
 
PRVC,Pressure Regurated Volume Control ventilation[換気モード](邦語:圧補正式従量式換気)
 Servo-300に装備された新モード。PCVの換気では一回換気量が一定化しないが、この欠点を解消するためにコンプライアンスに応じてPCVレベルを機械が自動調節するモード。Patient or Time trigger,Pressure controlled(variable for Volume regulation),Time cycleと表現できる。最近ではVYASIS社のAVEAやVELAにも搭載されている。Saime社のHeliaのPS-Vtも同様のモードである
 
Pressure Relief Ventilation[換気モード](邦語:圧リリーフ換気)
 New-Port E-100,E-150では、sCMV/CMVの吸気ガスをリリーフ弁で余剰圧を逃して、吸気圧が一定の値を超えないようにしている。一方、Bear-5,VIP-Bird のように回路内定常流を、呼気弁で開閉して余剰圧を逃してす方式もある。
 
PSV,Pressure Support Ventilation[換気モード](邦語:圧支持換気)
 自発呼吸を補助するように考案されたモード。患者の吸気の開始に同期してPSVが開始する。吸気中は設定した一定圧が維持される。患者の吸気努力が終了するのを機械が認識してからPSVの吸気相が終了する。吸気から呼気への切替条件条件は、一般的には呼気認識条件と呼ばれるが、正しくは吸気終了認識条件である。通常、吸気ピーク流量の20%前後に、吸気流量が低下したときを終了条件としている。ほかにも様々な条件が使われていて、同じ会社の製品でさえ機種により異なっていることもある。Patient trigger,Pressure control,Flow cycleと表現できる。
 
PSV end flow[制御用語](邦語:なし)
 New Port社のE-200に記載されている表現。PSVでの吸気終了条件の一つで、吸気のガス流量がPSV end flow以下になれば吸気が終了する。Terminal flowと同じ意味。PSV end flowの設定方法はユニークで、他の機械と異なる。詳細は E-200 の解説を参照。
 
Purge flow[制御用語](邦語:パージ流)
 リンス流とほぼ同じ
 
PWM,Pulse Width Moduration[構造用語](邦語:パルス幅変調)
 信号を変調する方式の一つ。信号の大きさをパルスの幅に置き換える変調方式。なお、信号の大きさを振幅の大きさに変える変調方式を振幅変調,AM,Ampliutude modurationといい、周波数の偏位の程度に変える変調方式を周波数変調,FM,Frenquecy modurationという。
 
RAM,Randam Access Memory[構造用語](邦語:ラムメモリー)
 読み書きが自在に行なえるコンピューター用の半導体記憶装置。
 
Regulator[構造用語](邦語:レギュレーター、減圧弁)
 高い圧のガスを一定の圧まで減圧して安定化する機械式の構造をした弁。日本語では単に減圧弁と呼ばれる。
(1)PEEP regulator
 呼気弁は通常PEEP弁を兼ねているが、PEEP圧を作るためにレギュレーターが利用されていることもある。この場合には、呼気弁の圧ドライバー回路に使用される。
(2)High Pressure regulator
 人工呼吸器に入力された高圧のガスは人工呼吸器の各部で作動上、制御しやすい圧に減圧して利用されている。吸気バルブに最適な圧まで減圧する部品をHigh Pressure Regulatorと呼ぶ。
 
Reference value[制御用語](邦語:基準値)
機械制御には制御しようとする目的値が設定してある。これを基準値と言う。この値と実測値を絶えず比較して誤差修正を行う。特殊用法として、Ohmeda社のCPU-1では、"Reference value"はEMMVモードでの実測呼気分時換気量/目標呼気分時換気量の比率を意味し、この値によってSIMVのTe時間を調節する。
 
Relief valve[構造用語](邦語:逃がし弁)
 Pressure relief valveと同じ。
 
Remote sensing tube[制御用語](邦語:近位圧測定チューブ)
 Proximal Airway Pressure Tubeと同じ。
 
Reservoir bag[構造用語](邦語:貯蔵バッグ)
 IMVやCPAP等で、自発呼吸用に定常流が使われている場合に、ピーク時の吸気ガス流量の不足分を補うために設けられているゴム製のガス貯蔵バッグ。
 
Reservoir chamber[構造用語](邦語:なし)
 Engstrom 社の人工呼吸器は独特な吸気発生機構が採用されているが、そこの吸気ガスを駆動する主要部品。詳しくはErica,Elviraの解説を参照。
 
Reservoir filler valve[構造用語](邦語:なし)
 Engstrom社の人工呼吸器に用いられている弁で、Reservoir chamber内に混合ガスを適量に充填する弁。
 
Reservoir tank,accumulator tank[構造用語](邦語:貯蔵タンク)
 ピーク時の吸気ガス流量を確保するために、人工呼吸器内部に混合ガスを蓄えておく金属性のタンク。
 
Respiration cycle[制御用語](邦語:1呼吸期間)
 吸気相と呼気相を合せた相をRespiration cycleと呼ぶ。
 
Re Zero valve[構造用語](邦語:ゼロ点調整弁)
 圧トランスデューサーのゼロ点調整弁。
 
Rinse flow[制御用語](邦語:リンス流)
 パージ流と同じ。患者回路や圧モニターラインが回路中の湿気で閉塞したり、機械内部が逆行性に汚染されるのを防止するためにドライガスを少量流してある。このフローをRinse flow と呼ぶ。
 
ROM,Read Only Memory[構造用語](邦語:ロム)
 読みこみ専用のコンピューター用の半導体記憶装置。電気を切っても記憶内容は消えない。
 
RS-232C[構造用語](邦語:なし)
 コンピューター間でのデジタル信号をやりとりする際の標準的なケーブル端子の規格。たいていのデジタル機器には、RS-232Cケーブル用の端子が設けられているが、電気信号のやりとりの規格がされている訳でないので、ケーブルさえ接続すれば信号伝達が可能という訳ではない。
 
Rubber valve tube[構造用語](邦語:なし)
 Siemens社のServo 900の吸気弁・呼気弁に使用されているシリコンゴム製の白い管のこと。蟹のはさみ状の機構でシリコンゴムの管を閉じたり開いたりして中を流れるガス流量を調整している。吸気弁も、同じ構造のゴム管なので、耐圧の限界のために作動圧は比較的低く設定されている。
 
Safety valve[構造用語](邦語:安全弁)
 人工呼吸器の故障時に、患者回路を大気に開放して、自発呼吸ができるようする弁。ただ現実的には、人工呼吸器に接続されている患者に、回路抵抗をのりこえて十分な換気をする能力があるとは思えないので、安全という名前から連想するほどの機能を期待できない。
 
Sensor[構造用語](邦語:感知装置)
 何かの有無を感知する能力をもつ装置をセンサーというが、トランスデューサーの意味で使われている場合もある。一般的に言えばセンサーは有無を感知するスイッチ機能があれば充分事足りるが、トランスデューサーには大きさの程度を電気信号に変換する機能が要求される。
 
Sequence[制御用語](邦語:シーケンス)
 シーケンス。一連作業や命令等の実行手順
 
Servo control[制御用語](邦語:サーボ制御)
 Acitve control,Feed Back Servo controlと同じ。出力値が基準値にできるだけ近い値になるように制御するための技術手法。出力値を基準値と比較し、その差が最小になるように誤差情報を増幅して入力に還元する。そうすると出力値は基準値に限りなく近づくように収束をする。ただし、どうしても入力→出力の間に時間的な遅れがあるので、出力値が基準値に収束するまでに一定の時間を要する。
 
Servo flow[制御用語](邦語:サーボ流)
 サーボ制御によって造り出されたガス流をServo flowと呼ぶ。
 
Servo loop[制御用語](邦語:サーボループ)
 サーボ制御では、信号が出力から入力へと還元するので制御ループができる。これをServo loop,サーボループと呼ぶ。
 
Servo motor[制御用語](邦語:サーボモーター)
 サーボ制御されているモーターをこう呼ぶ。どんな用途であってもかまわないが、人工呼吸器では、ベローズ駆動型の機械のベローズ駆動用のモーターやブレンダーのつまみの駆動用モーターとして利用されている。
 
Servo valve[構造用語](邦語:サーボバルブ)
 電気信号によって、吸気ガス流量を高速に、しかも自在にコントロールできる機能をもつ電磁弁。制御回路にサーボ制御が使われているので、サーボバルブと名付けられている。この弁の性能で人工呼吸器の基本性能がほとんど決定される程、重要な機能部品。アナログ弁をD/A変換でデジタル制御するもの、直接デジタル制御が可能な弁、等の各種の弁がある。各社によっていろんな命名がされている。
(1)Flow control valve
 Bird 6400,Bird 8400,VIP Birdでの名称。
(2)Inspiratory valve
 Siemens Servo 900での名称。
(3)Proportional selenoid valve
 Bennett 7200での名称。
(4)HPS valve
 Drager Evitaでの名称。
(5)Servo controlled flow valve
 Hamilton社のVeola,Amadeusでの名称。
(6)Proportional Metering valve
 New Port E-200での名称。
(7)Servoid valve
 New Port E-200には、この名称も使われている。
 
SIMV[換気モード](邦語:同期的間欠性強制換気)
 自由に自発呼吸をさせながら、自発呼吸に同期して間欠的に強制換気を与える換気法。吸気トリガーに同期してsCMV/CMVを一回だけ送る強制換気相と、回路内定常流やディマンドフローもしくはPSVによって自由に数回の自発呼吸ができる自由換気相、の2種類の換気相を時間で区切って患者に適応する換気方式。最近では、強制換気に量換気だけでなく、圧換気(PCV,PLV,AutoFlow,Pressure Augumentation,など)も用いる。強制換気相と自由換気相を合わせてSIMVサイクルと呼ぶ。SIMVサイクル時間の長さは60秒/SIMV回数で決定される。吸気トリガーに反応してsCMV/CMVを送る時期(強制換気を自発呼吸へ同調させるための待機時期)をSIMVでのトリガーウィンドーと呼ぶ。トリガーウィンドーの設けかたで2種類の方式に分類できる。
(1)固定時間方式(ヨーロッパ方式)
 SIMVサイクルの一部(たいていの場合はSIMVサイクルの20〜25%にあたる時間)にトリガーウィンドーを設ける方式。ヨーロッパ製の機械に用いられる事が多い。(例外ニューポート社)
(2)可変時間方式(アメリカ方式)
 SIMVサイクルの全期間をトリガーウィンドーとみなす。SIMVサイクルが始ってから最初に検出されたトリガーに対してのみ強制換気を送り、以降のトリガーには自由換気やPSVが適応される。アメリカ製の機械に用いられている事が多いが、最近ではDrager社も採用しだした。
 
SIMVサイクル[制御用語](英語:SIMV cycle)
 SIMVは、機械的な調節呼吸相と患者が自由に換気できる自由換気相より成立つが、これらを併せてSIMVサイクルという。
 
SIMV period[制御用語](邦語:なし)
 SIMVでのトリガーウィンドーと同じ。Siemensの解説書ではこれをSIMV periodと呼んでいる。
 
SIMVトリガーウィンドー[制御用語](英語:SIMV trigger window)
 SIMVサイクルのうち強制換気相に、患者の吸気努力と機械換気を同期させるためにトリガー待ちの時期が設けてある。この時相をこう呼ぶ。
 
Software[制御用語](邦語:ソフトウェアー)
 Hardwareと対になる用語。コンピューターではプログラムをこう呼ぶ。
 
SPG,Set Parameter Guide[構造用語](邦語:なし)
 Siemens-Elema社のServo-300は、設定が初心者には困難なので、これを補助するために、機械が設定項目を順にガイドしてくれる機能。
 
Spontaneous flow[制御用語](邦語:回路内定常流)
 New Port社のE-100やE-150でのSIMVやCPAP、には、自発呼吸用に回路内定常流が用意されている。これをこう呼ぶ。
 
Spontaneous period[制御用語](邦語:なし)
 Siemens社での呼びかた。Bennett社でいうところのSpontaneous phaseと同じ。
 
Spontaneous phase[制御用語](邦語:なし)
 Bennett 7200ではSIMVでの自由換気相をこう呼んでいる。
 
Step by Step Procedure[換気モード](邦語:なし)
 Hamilton社のVeolaに装備されているバックアップ機能で分時換気量の低下もしくは無呼吸が発生すれば自動的に、より調節呼吸に近いモードに切り替わっていく機構。PSV,SIMV+PSV,sCMV/CMVの順に選択されていく。
 
Stepper motor,Step motor[構造用語](邦語:ステップモーター)
 パルス信号の数により一定度数回転するように作られたモーター。パルスの数でモーターの回転する度数が決るため、デジタル信号による制御装置に利用される。比例制御弁の駆動モーターに利用されたり、プリンターの紙送り機構に使われたりしている。
 
System break down[制御用語](邦語:システムエラー)
 機械本体の故障ではなく、ある条件のもとでコンピューターのプログラムが袋小路に入ってしまい、コンピューターが次の命令を遂行できない状態。コンピューターシステムが機能上の作動を停止してしまうことを意味する。
 
System Error[制御用語](邦語:システムエラー)
 コンピューター用語。初期設定に誤りがあった場合などで、プログラムの作動で論理的に矛盾のあるプロセスに機械が遭遇したときの状態、もしくはその時に発せられるエラーメッセージ。
 
Te,expiratory time[制御用語](邦語:呼気時間)
 Ohemeda CPU-1での表現。強制量換気における呼気時間。
 
定常流[制御用語](英語:constant flow, base flow)
 本来の意味はガス流量値が経時的に変化しないガス流を意味する。人工呼吸器用語ではSIMV、IMV、CPAP、Time cycle Pressure plateauモード、の時において、強制換気時以外に自発呼吸用の吸気ガスを供給するため流してある患者回路内ガス流を定常流と呼んでいる。定常流では、患者はトリガーしなくても吸気ガスを吸えるため、おもにトリガーを感知しにくい小児 (Infant,Neonate) 用の呼吸モードで利用される。この場合患者の最大吸気フロー能力以上に定常流を設定する必要がある。成人では、定常流の流量を超えるピーク流に対して、不足分をディマンド流で補うか、リザーバーバッグで補うことになる。なお、どんな場合でも最低限、患者の分時換気量以上の流量設定は必要である。最近では成人用としては、定常流よりPSVで自発呼吸に対応することの方が多い。この場合では定常流をバイアス流として少量(5〜10LPM)用いる以外に用いる意義はない。
 
Terminal flow[制御用語](邦語:なし)
 Bennett PR-2では、一定流量以下に吸気ガス流が低下すると吸気相が終了するFlow cycleであるが、この流量をTerminal flowと呼ぶ。
 
Time limit function[制御用語](邦語:なし)
 Engstrom社方式のEMMVでは、設定分時換気量以上に実測吸気分時換気量が達成されていても、無呼吸になれば3〜10sで強制換気が送られる。これを"Time limit function"と呼ぶ。
トリガー期の短縮
 人工呼吸器によっては、SIMVで、トリガーウィンドーの期間にトリガーして強制換気が送られると、それ以降のトリガーウィンドーが時間軸より消滅するものがある。結果的にSIMVサイクル時間がその分だけ短縮する。
 
Transducer[構造用語](邦語:トランスデュサー)
 変換器のことを意味するが、人工呼吸器では測定現象の大小を電気信号に変換する装置を意味する。測定用のセンサーともいえる。人工呼吸器には圧、フロー、温度、酸素濃度のトランスデューサーが利用されている。
 
Trigger[制御用語](邦語:トリガー)
 本来はピストルの引金を意味する。人工呼吸器では、患者の吸気努力の開始に同期させて引金を引くように機械の強制換気を送りだすところから命名された。トリガーを得る方式には次の4方式がある。
(1)Flow trigger(邦語:フロートリガー)
 定常流やバイアス流を患者に自由に吸気させておいて、吸気流量が設定値を超えるとトリガーする方式である。一般的にいえば、圧トリガーに比して、トリガーに掛るまでの患者の吸気仕事量は少ないが、トリガーするまでの時間がかかる。定常流方式で自発呼吸に対応する人工呼吸器が全盛の時代にはフロートリガー機構が流行った。しかし当時は高感度のフローセンサーが一般的でなく、PSVを用いて自発呼吸へ対応する方式へ移行するに従い、再び圧トリガー方式が主流になってきた。これは定常流方式より、より早い段階で吸気をトリガーする必要性がでてきたためである。技術的には、圧による感知方式を使う方が、早くトリガーするものを作りやすい。しかし最近では高感度、高精度のフローセンサーが商品化されたので、再びフロートリガーが脚光を浴びている。
(2)Pressure trigger(邦語:圧トリガー)
 呼気相の終わり近くから、トリガーに備えて吸気弁、呼気弁を閉じて患者回路を閉回路にしておき、患者の吸気努力を回路内圧の変動で感知する方式。同じ感度に設定しても、実質上の感度は患者回路のコンプライアンスやバイアス流量で変わる。また、機械自体の性能でも変化するので、異なる機器での数値の比較は無意味である。絶対圧の変化で捉える方式とPEEP/CPAPレギュレーターの圧に対する相対圧の変化で捉える方式とがある。
(3)Volume trigger(邦語:ボリュームトリガー)
 フロートリガー方式に似ているが、流量の積分である吸気量でトリガーする方式。理論的にはフロートリガー方式に比べてより弱い吸気努力でもトリガー可能だが、評価は未知数である。
(4)Time trigger,Machine trigger(邦語:タイムトリガー)
 患者の吸気に関係なく一定の時間で強制換気を始める方式。機械的強制換気でのトリガー方式に該当する。
 
Trigger window,Synchronization window[制御用語](邦語:同期期間)
SIMVトリガーウィンドーと同じ。
 
Trimmer[構造用語](邦語:トリマー)
 トランスデューサーや流量調整器の精度を確保するための微調整つまみ。キャリブレーションつまみとも言う。
 
調節呼吸[換気モード](英語:control ventilation)
 強制換気と同じ。
 
VAPS,Volume Assured Pressure Support[換気モード](邦語:なし)
 Bird社の命名。Bear社でいうPressure Augumentationと類似であるが、微妙な差がある。Volume Assisted BreathにPSVを重ねたもので圧換気と量換気の両方の特徴を持つ新しい換気モード。
 
Venturi effect[構造用語](邦語:ヴェンチュリー効果)
 一定の直径の管を流れる気体は、その途中に狭窄部を設けると、狭窄部を通過するとき、狭窄部では気体の流量が早くなり、また同部での圧力が低下する。これをVenturi効果と呼ぶ。狭窄部前の圧と狭窄部での圧を比較し、圧勾配を測定することでガス流量を測定できる。
 
Venturi tube[構造用語](邦語:ヴェンチュリー管)
 Benturi効果を作りだすための管。Engstrom社のErica,Elviraではこの原理を応用して吸気ガス流量を測定している。
 
Volume Assisted Breath[換気モード](邦語:ボリューム補助換気)
 Bird社の機械の説明に用いられている表現。sCMV,ASSISTと類似。Patient or time trigger,Flow control,Time cycle(=Volume cycle)を意味する。
 
Volume Control[換気モード](邦語:ボリューム強制換気)
 Servo-300で使われている表現。基本的にはsCMV/CMVと類似。Pressure Controlと対になる用語。
 
Volume mesurement bag[制御用語](邦語:呼気ボリューム測定バッグ)
 Volume mesurement systemで、呼気を集めておくゴム製のバッグ。
 
Volume mesurement system[制御用語](邦語:換気量測定システム)
 Engstrom社のErica,Elviraでは、呼気をゴム製のバッグに集めて換気量を測定する。呼気ガス流量は測定できない。
 
Volume limit ventilation[換気モード](邦語:従量式換気)
 sCMV/CMVと同じ。最近ではあまり使われない表現。Time cycleのこともあるし、Volume cycleのこともある。
 
Volume Support,VS[換気モード](邦語:ボリュームサポート)
 Servo-300に搭載された新モード。Patient triggerで吸気が開始される。PSVと同じ換気パターンで換気されるが、一回換気量が一定化するように先行コンプライアンスに応じて必要なPSVレベルが演算されて自動調整される。Patient trigger,Pressure control(variable for Volume regulation),Flow cycleと表現できる。トリガーがなければ換気が始らないので、無呼吸になれば自動的にPRVCに切り替わるが、自発呼吸が再開してもVolume Supportには戻らない。
 
Vt;tidal volume[医学用語](邦語:一回換気量)
 
Waiting time[制御用語](邦語:不応期)
 Ohmeda社のCPU-1では、強制換気の直後には機械の誤動作を防ぐために、自発呼吸にトリガーしない不応期が設けられている。この期間をWaiting timeと呼んでいる。
 
Working Pressure[制御用語](邦語:機器駆動圧)
 Servo 900では、吸気フローバルブ (Servo valve) の前段階で、高圧の駆動ガスは低圧に減圧されてリザーバーに貯められている。このリザーバーの圧をWorking Pressureと呼んでいる。この圧が最大駆動圧になるので、高い方が最大級気流量に有利であるが、患者の安全とバルブチューブの寿命を考慮して、比較的低圧に設定されている。必要なケースでは、ここの圧をオペレーターが調整する。
 
Y piece[構造用語](邦語:Yピース)
 患者回路で吸気チューブと呼気チューブと気管チューブを接続するY字状の管。
 
Zeroing solenoid valve[構造用語](邦語:ゼロ点校正弁)
 Re-zero valveと同じもの。この弁が開くと圧トランスデューサーが大気圧に開放される。この時の圧をゼロ点として自動校正(キャリブレーション)する。