Medivent Ltd.
RTX respirator
1.特徴(図;RTXの外観写真)
 RTX respiratorは英国のMedivent社製の体外式人工呼吸器である。プラスティック製の弾力性軽量胴鎧(cuirass)を用いて、その中を陽陰圧にして胸郭を駆動する人工呼吸器である。こうした人工呼吸器は胸甲呼吸器とも呼ばれる。鉄の肺に代表される体外式人工呼吸器は頸以下の体をチャンバーに納めるが、胸甲呼吸器では駆動する部位を胸腹に限定することで簡便性と可搬性を得ている。中でもRTX respiratorは最大1200回/分にも及ぶ高頻度の換気回数が可能な点や高度のコンピューター制御と豊富なグラフィックモニター機能が特色である。定価470万円。
2.性能
 モード..............................continuous negative, control, resipratory triggered,
            respiratory synchronized, Secretion Clearance
            ECG triggered(日本国内では未承認のため不活化されている)
 一回換気量.......................N/A
 吸気ガス流量...................N/A
 最大吸気ガス流量...........N/A
 呼吸回数............................6~1,200 BPM
 I:E比..................................1.0:6.0~6.0:1.0
 最大駆動圧........................-50~+50cmH2O
 重量....................................9 Kg
 消費電力............................AC100v 500VA
 バッテリー作動時間........N/A
3.機構の概略(図;RTXの構造)
 ピストン型のポンプと大気圧に解放するための電磁弁より構成されている。ピストンはリニアモーターで駆動されている。胴鎧内部の実測圧が設定圧になるように、モーターはマイクロプロセッサー制御によって駆動されている。
4.操作(図;RTXの操作パネル)
1)接続
 患者の背面に専用のストラップを入れ、これを胴鎧としっかり固定する。患者はあらかじめ薄い衣服を着用しておく。胴鎧専用シールに沿って指を動かしてリークがないことを確認する。本体と胴鎧を専用ワイドボアチューブ、圧センサーチューブで接続する。
2)胴鎧(cuirass)
 胴鎧は体重1.8Kgの新生児より90Kg以上の成人用まで、11種類用意されている。胴鎧を適切に選択できているかはこの人工呼吸法の成否の重要な要素となる。リークのない範囲で最大のサイズを選択する。胴鎧は直接肌に接触させてはいけない。
3)設定(図;RTXのメニュー構造
 電源をONにすると30秒のセルフテスト後にモニターモードになる。このモードではエアウェイ圧、胴鎧圧(cuirass圧)やSPO2、海外仕様ではECGをモニターする。機械は呼吸補助を一切行わない。MENUキーを押すと画面右側にパラメーター設定、モード設定、アラーム設定のメニューが表示されるので、矢印キーを使用してカーソルを移動して、ACCEPTキーを押して選択する。そうするとそれぞれの設定に応じたサブメニューが表示されるので、カーソルを移動して必要な選択や入力を行う。
4)モードの説明
(1)monitor
 モニター機能のみ働き、換気動作はしない。
(2)continuous negative
 持続的に陰圧を加えるモード。気道内陽圧式換気法でのCPAPに相当する。
(3)control
 自発呼吸に同期しないモード。
(4)respiratory triggered
 吸気の開始に同期するが、吸気の終了はtime cycleで行われる。気道内陽圧式換気法でのA/Cに相当する。トリガー源は胴鎧内圧と気道内圧(センシングチューブを気道内に留置する)のいずれかを選択する。
(5)respiratory synchronized
 吸気の開始、呼気の開始に同期するモード。気道内陽圧式換気法でのPSVに相当する。
(6)secretion clearance
 肺理学療法用のモードで痰の喀出を促進する。自発呼吸に同期しない。vibrationとcoughがある。前者は240-1200BPMで振動を与える。気道内陽圧式換気法でのHFVやHFOに相当する。後者では体外式に咳を模倣するモードである。
(7)ECG triggered
 心電図に同期させて換気補助を心臓の拍出の補助を行うモードである。日本では未承認のためこの機能は不活化されている。グラフィックディスプレーの上より3段目の欄はECG表示用であるが、日本仕様ではECG表示機能まで殺されている。
5.モニター、アラーム図;RTXのディスプレー表示例
(1)モニター
 グラフィックディスプレーで胴鎧内圧、吸気圧、プレスチモグラフを表示できる。なお、国内仕様ではECGは表示できない。
(2)アラーム
 無呼吸(10-30秒)、吸気圧上限・下限、呼気圧上限・下限、パルスオキシメーターのアラームが装備されている。 
6.患者回路
 胴鎧と本体の接続は図に示した。(図;RTXと胴鎧との接続
7.メンテナンス
 毎使用時にワイドボアチューブ、圧チューブ、を点検、必要なら交換。500時間毎に胴鎧定(cuirass)を交換。定期的に機能チェック、整備をおこなう。1000時間もしくは6ヵ月ごとに内部の清掃、ヒューズ交換、バルブの作動チェックや圧トランスデューサーの点検、配線点検、ねじの点検。2000時間もしくは1年ごとにアラーム用のバッテリー交換と冷却用のファンの交換。4000時間もしくは2年ごとにバルブの点検調整。16000時間もしくは8年ごとにバルブ交換、コントロールモジュールの交換。
8.欠点
1)換気補助能力も限定されているために換気の確実性がない。そのために中途半端である。NIVほども評価が確立されていない。
(2)トリガー機構が貧弱で感度が悪い。よほど強い呼吸でないと捉えることはできない。それ程呼吸が強いなら、そもそも補助なんか不要である。確実に患者の呼吸をとらえる機構が望まれる。
(3)使用方法や有用性が確立していないので、利用できる可能性がある機能を盛り込んでいる。アイデア倒れのところがある。そのため、操作パネルは実験機のそれであり、スマートに実用的な設定を行えない。
(4)実際に装着してみると胸郭の前面が絶えず叩かれている感じがあり、不快感がある。長く装着していると胸が苦しい。少なくとも健常な人間にとって呼吸が楽とは言えない。病人には??