AIROX
LEGENDAIR
1.特徴(図レジェンドエアの外観写真)
 LEGENDAIRはフランスAIROX社製の、体重5Kg以上の自発呼吸がある患者を対象とした在宅用の人工呼吸器である。小型軽量ながら使いやすいインターフェースと多彩な換気モード、吸気・呼気に内蔵されたフロートランスデューサーによる高精度の流量制御が特徴である。外観より受けるイメージに反して、病棟におけるクリティカルな症例にも対応可能な高性能・高機能機である。NIPPVも可能で、内蔵バッテリーによっておよそ6時間以上作動できるので移動用にも適している。もちろん交直両用の電源が利用できる。定価178万円。
2.性能
 モード...............................PSV S/ PSV S/T 
            PCV/ PACV = PCV
            CV/ACV = A/C(volume control)
            SIMV = SIMV(volume control)+PSV
            +BUR
            +Target Volume(圧換気モードのみ)
 一回換気量.......................50-1,400m
 吸気ガス流量...................200 LPM
 呼吸回数............................4〜60BPM
 吸気時間............................0.5〜3.0 sec.
 EPAP...................................4〜15pH2O
 IPAP....................................4〜30pH2O
 重量....................................2.7 Kg
 消費電力............................AC100v 90VA max., DC24v 80VA max.
 バッテリー作動時間........約6時間(500ml*15BPM, IPAP 30mbar)
3.機構の概略(図;レジェンドエアの構造)
 DCブラシレスモーター駆動による低慣性マイクロタービンで吸気ガスを発生させる方式である。基本的にタービンの回転によって吸気ガス流量が決定される。吸気相では通常状態では呼気弁においてリークはなく、発生した吸気ガスはすべて吸気量となる。したがってタービン回転数は吸気・呼気相、設定、換気モードなどで大きく変化する。呼気弁は比例ピエゾバルブで駆動圧が調整される。ピエゾバルブとは圧電効果を応用した電磁弁である。ちなみに圧電効果とは電気を通すと体積が変化する特性を持った素子(ロッシェル塩などの結晶)を用いて比例制御するバルブである。一般的にこうした用途には電磁弁(コイルと呼ばれる電磁石に流した電流によって磁力を発生させ、この磁力によってバルブの開閉度を調節するバルブ)が用いられるが、圧電効果を持つ圧電素子に電圧をかけて、この素子の体積変化によってバルブの開閉度を調節しているのがピエゾバルブである。
 
参考:実はピエゾ素子は一般的に広く使われていて、例えば安価なラジオのイヤホンにも使われている。ピエゾ素子の特性としてピエゾ素子の電圧と変位の関係は比例関係ではなく「ヒステリシスカーブ」と呼ばれる曲線を描く。そのためピエゾ素子を駆動源として使用した場合、たとえ同じ電圧をかけても変化量が同じにならない。つまり、電圧のコントロールだけでは変化量の再現が出来ない。そのかわり駆動電力に対する変化量の効率が良いので、高効率の駆動が可能になる。したがってiPODなどのHiFiオーディオ用のイヤホンは電力に対する効率が多少悪くても、音質優先の設計思想を基に、加えた電圧に対して変化量が比例している電磁式が多用される。一方、圧電式は、少し再現性は劣るが効率が良いので安価なラジオには圧電式のイヤホンが多用されている。しかし、近年、再現性が低いという欠点を変位センサーで変位量を実測して誤差量を駆動電圧にフィードバックすることで常に実際の変位量を一定化させる技術が確立したので、常に高精度かつ高分解能の変位量決めが可能になった。
4.操作(図;レジェンドエアの操作パネル)
 電源をONにするとウェルカムメニュー画面が表示される(図;ウェルカム画面)。その後、スタンバイ状態になり、前回停止時の設定が画面に表示される(図;前回設定画面)。画面表示は2つの画面で構成されている。換気パラメーター画面とアラーム画面である。画面の切替はアップ・ダウンのカーソルを移動させてメニュー画面の上端もしくは下端を超えて移動すると次の画面になる。直接メニューキーを押すと瞬時に画面表示を切り替えることができる。設定を変更したい項目までカーソルを移動し、確定キーで項目を確定し、その後アップ・ダウンキーで必要なモードや数値を入力し、確定する。正面パネル上のスタートキーを押すと換気がスタートする。スタートキーはウェルカムメニュー画面表示中でも有効で、このキーを押すと直ちに換気がスタートする。パネルロックはアップ・ダウンキーの両方を同時に6秒以上押し続けると作動する。ロック状態ではパラメーターの変更はできなくなる。解除も6秒以上押し続ける操作で行う。
1)モード
(1)PSV S, PSV ST
 PSVは一般的なPSVとほとんど同じである。吸気時間の最大値は3秒である。Back up RとApnea時間を設定すると無呼吸バックアップ(タイムサイクルでPSVが開始する)を設定できる。
(2)PCV/PACV
 これも一般的なPCVとほとんど同じである。Target Vtを設定するとPRVCモードになる。この際には一回換気量が設定値になるようにIPAP圧が自動的に調節される。Trogger Iを調節するとトリガー機能をOFFにもできる。
(3)CV/ACV
 このモードは一般的にVolume Controlと呼ばれる量換気モードである。CVはControlled Ventilationを意味し、ACVはAssisted Control Ventilationを意味する。トリガー感度をOFFにするとCVになる。
(4)SIMV
 SIMVのトリガーウィンドーは可変時間方式である。量換気(VCV)による強制換気相とPSVによる自発呼吸相より構成される。無呼吸があるとバックアップ回数(BUR)によって設定する換気回数で強制換気(VCV)が行われる。自発呼吸を検出するとバックアップ状態より、SIMVに自動復帰する。
2)Trigger I、トリガー感度
 トリガー感度はTrigg Iと表示される。1~5の段階があり流量と圧トリガーのいずれかの条件を満たした方でトリガーされる。最少呼気時間も0.7~3.0秒の範囲で変化する。
レベル1   3.5LPM or -0.3mbar
レベル2   4.0LPM or -0.5~0.7mbar
レベル3   4.5LPM or -0.6~0.8mbar
レベル4   4.5LPM or -0.7~0.9mbar
レベル5   4.5LPM or -0.8~1.0mbar
 
3)Rise Time
 Rise Timeは圧換気において吸気圧が立ち上がる時間を調節する機能である。これもレベル1~4まである。数値は相対的なもので必ずしも設定値どおりにはならない。括弧内は許容される吸気時間。
レベル1   0.2秒 (0.2~0.7秒)
レベル2   0.4秒 (0.4~1.0秒)
レベル3   0.6秒 (0.6~1.2秒)
レベル4   0.8秒 (0.8~1.5秒)
 
4)Trigger E
 これは一般的にフローターミネーションと呼ばれる機能で、ピーク流量に対する割合で表示される。Trigg Eは設定吸気圧もしくはRise Timeによって規定される最少吸気時間が経過した後に有効となる。さらに吸気時間は最大3秒、先行換気の呼吸サイクル時間の50%値までに制限されている。
 
5)Back up R
 無呼吸が継続した際に行われるバックアップ換気回数を設定する機能である。OFFにもできる。無呼吸時間Apnea Timeを設定することもできる。30秒/BUR~180秒/BURの範囲で選択できる。デフォルトはAutoで60秒/BURである。
 
6)Target Vt
 PSVやPCVなどの圧換気モードでは目標一回換気量を設定できる。この機能によりそれぞれVSやPRVCモードに変化する。最大吸気圧IPAP maxiを設定する必要がある。
7)Ramp
 量換気モードでの吸気流量パターンを意味する。Rは矩形波でDは漸減波である。
8)SIGH
 ONにするとSIGH VOLUMEとSIGH RATEを設定できる。
5.モニター、アラーム
 気道内圧はバーグラフ表示される。、吸気・呼気一回換気量、換気回数、FiO2の実測値をモニターして数値表示する。これらの項目は上限・下限をアラームで監視されている。その他、機器作動異常に対してエラーメッセージが表示される。アラームは重要度によって5段階に分類されている。より危険な状況では連続音が鳴り赤いLEDが点滅しディスプレーが点滅するが、クリティカルな状況でなければアラーム音も鳴らないこともあり、メッセージ表示だけのこともある。
6.患者回路図;患者回路シングルブランチ図;患者回路ダブルブランチ
 シングルブランチとダブルブランチを利用できる。シングルブランチの場合は呼気のフロー測定ができない。
7.メンテナンス
 エアインレットコンビフィルターは1ヵ月に1度以上交換する。定期的に機能チェックを行う。また、フィルターの点検、交換を行う。メインテナンス画面を利用するとある程度の保守点検を容易にできる(図;メンテナンス画面)。内蔵バッテリーもメンテナンスメニューを使用して月に1回は充電状態をチェックする。メンテナンスメニューは電源OFFの状態からスタートキーを押しながら電源ONとするとセットアップ画面が表示されるので、そこより入いる。1年に1回以上IMI認定のサービスマンによってキャリブレーション等の保守を行う。
8.欠点
1)パラメーターの設定をダイレクトに入力できないのが煩わしいが、在宅用であることを考えると仕様であるとも言える。
2)パネルロックが簡単すぎるので、ここはパスワード方式に変更すべきである。
3)ディスプレーのメニュー表示が日本語化されていない。
4)外部DC電源が24Vなのは使いずらい。是非12V対応として欲しいところである。