Respironics
ESPRIT
1.特徴図;ESPRITの外観写真
 BiPAPシリーズによって低侵襲性人工呼吸法を確立したRespironics社であるが、通常の人工呼吸器として登場したのがESPRITである。BiPAP Visionに呼気弁を設けた構造であるが、もちろん低侵襲性人工呼吸もできる。呼気弁を設けた目的は酸素消費量の低減と騒音の低減にある。
 
2.性能
1)利用できるモード
 A/C (VCV, PCV)   
 SIMV(VCV, PCV)+ PSV
 CPAP(PSV)       
 S/T(NIPPV)
 S(NIPPV)
 ---------------------------------
 Flow trigger
 +PEEP
 
2)基本データー
 最大吸気ガス流量
   強制換気............140LPM
   PSV.....................200LPM
 最大強制換気数......... 80BPM
 最大SIMV回数...........80BPM
 EPAP.............................2-25cmH2O
 IPAP..............................2-35cmH2O
 吸気時間.......................0.1-9.9秒
 バッテリー駆動時間...オプションバッテリーを装着すると約30分作動
3.機構の概略
 Tバードのようにタービンの回転数によって直接吸気ガス流量を調節する方式でなく、ブロアーにより加圧されたガスを吸気バルブで流量調節して吸気ガスをつくりだす方式である。したがって、コンプレッサー内臓の人工呼吸器と類似と見なせるが、ブロアーの方が明らかに低騒音である。発生しうる最大吸気圧も100cmH2Oと充分である。例によって細部の構造は公表されていない。
4.ニューマティック回路図;ESPRITの構造説明図
 この程度の無意味な図面しか公表されていない。BiPAPに呼気弁を装着した構造になっている。呼気弁は加温フィルターで保護されている。
5.制御ソフト
1)トリガー方式
 圧トリガー(0.1-20 cmH2O)もしくはフロートリガー(0.5-20 LPM)を選択できる。ただし、NIPPVモードではフロートリガーのみである。ベースフローはトリガー感度+3LPMである。
2)A/C
 VCVもしくはPCVを選択できる。VCVでは漸減波もしくは矩形波を選択できる。
3)SIMV
 トリガーウィンドーは可変時間方式である。
4)PSV
 吸気終了認識条件には、吸気流量がピーク流量の10-40%以下である。
5)Rise Time
 0.1-0.9秒の範囲で選択できる。
6)バッテリー駆動
 オプションのバッテリーにより約30分間作動する。ただし、設定条件により増減する。酸素の付加を必要としなければ、酸素配管は不要である。
7)無呼吸バックアップ
 10-60秒の無呼吸を検出すると作動する。この際アラームが作動し、あらかじめ設定しているApnea rateで換気する。
6.操作方法(図;ESPRITの操作パネル)
 操作はタッチパネルで項目を選択し、回転ノブで数値を選択し、入力キーで確定する。モード設定画面で、A/C, SIMV, CPAPのいづれかを選び、強制換気の種類をVCV, PCV, NPPVの中より選ぶ。(図;ESPRITの設定画面)その上でさらに必要なパラメーター、アラームの数値設定をする。
7.アラーム機能
1)アラーム状態
 正常、高度緊急(赤色の点滅)、中・低度緊急(黄色・薄黄色の点滅)の状態がある。
2)アラーム項目
 気道圧上限、低吸気圧、低PEEP圧、頻呼吸、低呼気分時換気量、高呼気分時換気量、低強制一回換気量、低自発一回換気量、などがある。
8.ディスプレー機能
 気道圧はバーグラフならびに、小さなグラフィックで常時表示される。実測データーはPatient Data(図;ESPRITのデーター表示画面)、monitor画面(図;ESPRITの圧表示画面)で表示できる。
9.メンテナンス
1)タッチパネル
 タッチパネルは柔らかい布で清掃する。決してパネル下端を濡らさないように注意する。
2)呼気側フローセンサーや呼気弁(図;ESPRITの呼気弁とフィルター(1)heated expiratory bacteria filter,(2)knob,(3)retaining bracket,(4)tabs,(5)heater housing,(6)receiving compartment,(7)filter input port
 これらは、本体内に内蔵されており、加温フィルターで保護されているので日常的な使用での分解、洗浄、滅菌の必要はない。電源を切って15分以内はヒーターの余熱が残っているので熱傷に注意すること。
3)日常
 フィルター類はオートクレイブのみ可。吸気側フィルター、呼気側フィルターは、損傷の有無、閉塞の有無、抵抗を日常的に点検し、必要なら交換する。
4)250時間
 エアーインレット、ファンフィルターを清掃する。
5)10,500時間
 サービスによる点検、保守を受ける。
10.欠点
1)グラフィックモニター機能が貧弱である。
2)発売時はともかく、現在はNIVもできる人工呼吸器が増えたので、特別にこの機器を選ぶ必然性がない。
3)正面パネル面積は少ないが、機械の奥行きがあるので、けっこうじゃまに感じる。